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ある講師の顛末

これまで色々と書いてきたわけですが。


あの子の講師の記事は、これで最後にしようと思います。

講師でないVestaが、講師としてのVestaの最後の日を書き記しておくことは、
きっとそれなりに意義のあることでしょう。
その日の出来事は、ある種の結果です。
私がしたり言ったりしたこと、言われたこと、その場の人々のこと。
それに対し、どう感じて何を考えたか。
昨日の私はどうだったか、今の私は、明日以降の私は。
それぞれが、さらに未来の私に対して新しいたくさんの結果をもたらすはずです。
元にする記憶の細部や印象が変わっていくこともあるでしょう。

それが善いか悪いか、はっきりとしたことは言えません。
が、私はいつまでも考え続けるのではないかと思っています。
それは、小さな経験さえ惜しむ吝嗇家の私が、
いつのまにか身につけていた生き方のようなものかもしれません。
そうし続けることが、面白かったり面白くなかったりします。

前置きが長くなってしまいました。
まぁ、とくに読みやすくしてはないです。
長いだけの、ただの記録です。


ある講師の顛末でございます。

私は午後七時過ぎ、生徒の家の前に車を停めました。
大きなログハウス調の家で、私が着く時間にはいつも、
窓からあったかそうな光が漏れているんですよ。

私がお邪魔すると、奥さんとコーギー犬が出迎えてくれます。
短く挨拶を交わして、生徒の部屋に向かいました。
「それじゃ先生、よろしくお願いします」
といつも通りに言った奥さんは、頭をいつもより深く下げ、
いつもより長く私の背中を見送っているように感じましたが、
一瞬振り返りそうになった私はわざと、それを頭の隅っこに追いやりました。

講師 : 「○○○ちゃーん、こんばんわー」
生徒 : 「はぁーい」
講師 : 「入ってもいいですか?」
生徒 : 「どうぞー」
講師 : 「お邪魔しまーす」

これは毎回、私が生徒の部屋に入る前のやりとりです。
やって欲しいことはあるかと訊くと、生徒は数学の先生に貰ったプリントを出しました。

生徒 : 「苦手なところがあるから、何か問題くださいって言ったんですよ」
講師 : 「ほほーう」
生徒 : 「これなんですけど」

これがまたけっこう難しい問題集だったんですよ。
一緒に考えながら勉強していたんですが、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
一時間半ぐらい経つと、おやつの時間になります。
奥さんが生徒の部屋までおやつを持ってきてくれました。
昨日のおやつは、日本茶とブルガリアヨーグルトと、まんまるいチョコレートパフ。

ヨーグルトは苺入りで、
フタのところに「ブルガリア」って書いてある2個つづりのやつです。
つづったところをはずして2個にすると、フタの字が
「ブル」「ガリア」に分かれました。

講師 : 「○○○ちゃん、どっちにする?」
生徒 : 「じゃあわたし、ぶ る で」
講師 : 「じゃ私、 が り あ で」
生徒 : (笑)
講師 : (笑)

生徒 : 「せんせー、味はどうですか?」
講師 : 「うーん、いちごのあじがします。
講師 : 「○○○ちゃんはどうですか?」
生徒 : 「うーん、いちごのあじですね。
講師 : 「・・・・・・・・。」
生徒 : 「・・・・・・・・。」
講師 : 「私はあと、よぉぐるとのあじがしますよ。
生徒 : 「そうですね、よぉぐるとのあじです。
講師 :(笑)
生徒 :(笑)

あとの会話はよく覚えてないです。
たしか、フタについたヨーグルトは「舐める派」か、「こそげ落とす派」かとか、
生徒の家のカブトムシの幼虫の話、毛虫の話、嫌いな虫の嫌いなところはどこかとか。
他愛ない会話です。

ひとしきり喋って、数学のプリントを終えたあと地理の一問一答ゲームをしました。
あっという間に時間が過ぎました。
「じゃ、帰ります」
と言って生徒の部屋を出て、いつも通りに受験前のアドバイスを少々。
受験前の下見は「だるーく」して、緊張してる子を見ても「緊張をうつされない」ようにと。
玄関先に、私と生徒と奥さん。
靴を履いているのはいつも私だけです。

「大丈夫ですよ、××ちゃんの生徒ですから。」
と奥さんは言いました。
その後ろに、犬を抱いた旦那さんも来ました。
生徒も、ご両親も、目を赤くしていたように見えました。
そう見えただけかもしれません。
が、私はあのとき確実に、自分の中の何かを押し殺しました。

講師 : 「じゃ、またね」
生徒 : 「はい」

ご両親が深く頭を下げました。
私は2人の顔を見ないようにして家を出ました。
泣いていたら、困るから。

外まで見送りに来た奥さんは丁寧に頭を下げてくれました。
奥さんの頭が上がる前に、私は車に向かいました。
振り返りませんでした。
生徒の家を離れてから、音楽をかけて大声で歌いながら家路につきました。

途中でコンビニに立ち寄り、酒と煙草を買って、帰ってから独りで飲みましたよ。
部屋の机の上には、生徒宅に行く前に準備していたプリントの草稿や、教材がありました。
ふと今までのプリントを見たくなり、いろいろと取り出して見ました。

しばらく見ていました。

涙が出てきました。

それが、講師の最後の一日でした。

以上でございます。
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コメント

初めまして♪
家庭教師をやってますMと言います!
家庭教師仲間を探して、ブログランキングから遊びに来ました!
今日の記事は、担当していた子供の最後の授業の話ですか?
それが、無事に終わったのでしょうか?
お疲れ様です!
講師は終わったようですが、ぜひブログは書いてくださいね(^^)
また、遊びに来ます!

コメントありがとうございます。
また来ていただけると嬉しいです。

これほど愛された生徒さんは幸せ者ですね。
それだけでも意味があったと思います。
ご苦労様でした。

ありがとうございます。
この経験を無駄にしないよう、がんばります。
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