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情熱

ちょっと、 (゜з゜)v-~


今日はいつもと違う話をしましょう。



例によってあまり詳しくは書けませんが、食品関係という業種上、私の働いている職場には、
その身に情熱をたたえた、食に携わる人々が訪れることがあります。
この片田舎へ、それこそ本当に色々なところから。

今日も、勤務先に20代くらいの男の人がやってきました。

やや痩せ型、青いフリースの上着にジーンズ、ワーカーブーツを履き、
眼が大きく、顔立ちに少年の雰囲気を残した、髪の短い中背の男性。
その大きな眼と、細身な体つきのわりにごつごつとした手が印象的でした。
私はいつものお客様用の対応をして彼を迎えましたが、
どうやら彼は普通の客として来たのではないようで。
隠しながらも、ちょっと不安そうな表情が見て取れました。

「どんなご用件でしょうか?」
と訊いたところ、
「あの、今日は・・・お尋ねしたいことがあって、来たんです」
彼は遠慮がちに、しかし一言ずつ、はっきりと答えました。
目を真っ直ぐに見据えたまま。
私は彼の物腰に何か決意のようなものを感じ、(この人は・・・料理人だ・・・!)と直感しました。

「わたくし、・・・料理をしている者で・・・ええと」
やっぱり。

「少々お待ち下さい、いま社長をお呼びしますので」
私はとっさに言いました。
「いや・・・そんな申し訳ありません」
彼はかなり恐縮した様子でしたが、本気で断るつもりもないようで。
「いえいえ、どうぞそちらにかけてお待ちください」
精一杯、あたたかく微笑みかけると、
「あ、ありがとうございます」
と彼は応じました。

私が(ちょっと面倒臭そうな)社長を連れて戻ったとき、
彼は座らずに、壁に貼ってあった、とある作業工程の写真を真剣に眺めていました。
社長はいつものぶっきらぼうさ加減で、彼に話しかけました。
「ああ、どうも。どういったご用ですか?」
「あ、どうも、お邪魔してすみません」
彼はこれでもかというくらいお辞儀をし、
「わたくし、料理をしている者で、お尋ねしたいことが・・・あって、参りました」
社長の目を見据えて、やはり一言ずつはっきりと言いました。

「う~ん・・・まぁ、どうぞ、そちらにかけてください。」
社長も彼の雰囲気に気付いたようでした。

お茶を淹れながら聞こえてきたところによると、
彼はイタリアで3年間修行を積んだ料理人だそうで、
帰国後、この地の食材の豊かさに惹かれて、近くの街で店を開くとのこと。

私の職場ではお決まりのパターンなのですが、社長はひとしきり彼の話を聞き、
具体性のほどを確かめるように、現実的なことを次々と彼に質問しました。
どのような店を開くつもりなのか、予算やメニューの価格帯、それに応じた人件費。
そして、私の勤務先の会社から、
どのぐらいの量のものをどれぐらいの価格で仕入れるつもりなのか。
それにとどまらず、この地で長期的に営業していくことについて、どう考えているのか。

その現実の厳しさ。

こんなことを矢継ぎ早に訊かれて、全く顔色を変えなかった人はこれまで一人もいません。
これは手厳しい洗礼だと思われるでしょうか?


実はそうではなかった、ということに私は昨年気付いたんです。


去年の夏も終わりに近づいた頃、職場に一人の大学生がやってきました。
いわゆるビンボー旅行というやつで、マウンテンバイクに乗り、
テントを張って野宿したり、田舎の民家を転々としながら旅行するというアレです。
彼は、職場の入り口で夕立ちに襲われたところを私に発見され、
夕飯をおごられたことをきっかけに、ちょっとした手伝いをしながら(しかも3食寝床付きで)
結局3日間、私の働く職場に滞在することになりました。

その「いそうろう君」(ウチでつけられたあだ名です)には、夢がありました。
何かというと、いまいる教員の過程を卒業して、食に携わることを教える先生になりたい
というのと、いつか牧場をもって農業をしたい、もしくは飲食店をひらく、
のどれか1つがしたい、のだそうで。

現実性に欠ける、そんなことは誰もが気付きました。
でも、みんな彼の熱意に惹かれてしまったんですね。
男とはいえ、寒くなり始めた晩夏の北海道で単独バックパッカーなんて、
なかなかできることじゃありません。
実際彼は、厳しい夜の寒さに耐えながら、数日のあいだ、
途中で立ち寄ったパン屋さんに分けてもらった、食パンの耳だけで食いつないでいました。
それをニコニコと話す「いそうろう君」。

何かもやもやと感じるところがあったので、私は彼と話をすることにしました。
私が「いそうろう君に」訊いたことは、

Q : 一体何を得るために、このようなビンボー旅行をしているのか?
A : 「いま自分には夢があるが、最も興味ある農業の現場について学びたいと思ったから」

Q : では、ここまでの道程でどんなことを学んだのか?
A :「 酪農家の家に泊まって搾乳させてもらった」
   「自家製ソフトクリームを食べさせてもらったり、いろいろなところを見て回った」

Q : ここまでの、畑の様子の変化や集落の道路の敷かれ方はどう思ったか?
A : え・・・?なにがですか? う~ん・・・別に何も。

最後の「いそうろう君」の回答が引き金になり、私は今思えば恥ずかしいぐらい偉そうに、
移動中に眼に映るものだけでもどれほど良い教科書になるか、
について懇々と説教してしまいました。(3時間ぐらい)
それも、いま自分で思い出しても苦笑いしてしまうほど手厳しく。

しかし、私は彼が嫌いだったわけではありません。
彼のほどの行動力、熱意は現実性に欠けるというだけの理由で潰れるべきではありません。


その夢を、情熱を、それだけのもので終わらせてほしくなかったからです。


「いそうろう君」は帰り際、私たちに丁寧にお礼を言って、ニコニコと去っていきました。
彼はいま、元気にしているでしょうか・・・?
彼は、あのことを判ってくれたでしょうか・・・?
否、判ってくれなくてもいいんです。
ほんの少しでも気付いてほしかったんです。

その夢や情熱は、潰れるには惜しいほど価値のあるものだということに。

微笑ましい夢を微笑ましく見守るだけならば、簡単です。
しかし私たちには、そうすることがどうしてもできなかった。
社長も同じだったんです。
あれは手厳しいだけの洗礼ではありませんでした。

「いそうろう君」のおかげで、私はそのことに気付くことができました。
思えば私も同じような洗礼を何人かから受けたことがあります。
彼らがどんな気持ちで、私に厳しいことを言ったのか。
今なら解る気がします。
彼らの気持ちと、自分の価値が。


そんなこんなで、ここで、この仕事をすることが私は好きです。
ずっとしているかどうかはわかりませんが、ここで学べることが多いということが、
いま私がここにいる一番の理由です。
駄文失礼しました。
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