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この物語はフィクションです31

6月22日


仕事上の、恐ろしい提案。
夕方ごろ、私は妙な書類を渡された。
何かの研修について書かれた書類だ。
地元の技術普及施設の職員がうちの会社に持ってきたらしい。
その職員は社長と向かい合って座り、期待に目を輝かせて私を見ていた。
どうせたいしたものではないだろうと思い、たいして読む気もしなかったのだが・・・

「これ受けたら、何かの資格取れるんですか?」
「いや、取れないけど・・・」
「へぇ、じゃあどんな研修なんです?」
「お前の仕事に関する広範な分野の知識と技術を、専門機関を通じて基礎からすべて学べるというやつだ」
「・・・・そう、なんですか?」

・・・・・果たして本当だろうか?
信頼性はあるのか、そして本当に学びのための研修なのか。
私は半信半疑で社長と職員の顔を伺った。

「この研修は絶対役に立つと思って・・・どうです、受けてみません?」
「もし良かったら、お前か・・・次期社長のどっちかに受けてもらおうかと思ってるんだが」
「ええ、こんな機会は滅多にないですし・・・」
「実習もあるし、お前が作ってないもののことだって教えてもらえるぞ」
「うーん・・・・」

ふたりが期待と不安のこもった目で私を見つめている。
これは、この空気は・・・・
なんだ、要するに私に受けて欲しいということか?
とりあえず、書類を読んでみよう。

書類によると、研修のための授業は大学風にコマ分けされていた。
授業科目にはたくさんの必修科目と2対計4科目の選択科目があり、
選択科目はすべて受講者のプレゼンテーションを含むもの。
1コマ90分、1科目につき2~8コマの単位制で、
受講場所は専門分野を担うと思われるいくつかの地方大学などが中心だった。

これは本格的に検討の余地あり、か・・・・?

しかし私は悩んだ。
私はこの研修を受けることで、いま以上の責任を負うことになるのではないか。
技術者として、また・・・・期待される者として。

とりあえずしばらくの間、書類は預かっておくことにした。
研修の日程はまだ決まっておらず、日程連絡は7月のはじめ。
予定では10月におこなわれることになっている。
まだ、時間はある・・・


夜近くなって、先ほどの職員から会社に電話が入った。
電話を受けた社長が、すぐに私に言った。

「研修の件、お前ならOKだってさ・・・推薦してくれるって」

推薦? お前なら? それは一体どういうことだ・・・

「あ? いや、定員は5名までで・・・審査っつーか参加条件があるんだよ」
「参加条件?」
「ああ、技術者の後継者かそれに準ずる人じゃないと受けられないらしい」
「じゃあ社長が出ればいいじゃないですか」
「俺は駄目さ、年齢制限があるから」
「はあ・・・・・」
「で、定員5名のうち3名はもう決まってるらしいが、お前なら推薦してくれるってさ」
「要するに、もう参加できるって決まったんですか」
「ああそうだ・・・お前なら参加してもいいらしい」

だからその、お前なら、が気になって仕方ないんだよ。
そして既に私が参加する方向で話が進められているのは、
・・・いったいなぜ、どういうわけだ?


頭が痛い。

この間例の職員に、新しい商品のサンプルを渡したのがまずかったのだろうか。
拙いながら独学で学んで試作したという説明をしたのがまずかったんだろうか。
ごまかして、嘘をつけばよかったんだろうか。

職員は、私に期待しているのだろうか。

・・・私を優秀だと、あるいは将来有望だと思っているのだろうか。

言いようのない不安が、脳髄の中をぐるぐる回っている。

期待されるのは恐ろしいことだ。
なにより責任が伴う。
私が技術者として期待されているのなら、
それは技術者としての今後のあり方をも期待されているということだ。
技術者以外の、ほかの一般人としてのあり方ではない・・・


私のほかには、どんな人が参加するのだろうか。
私は参加者として、審査を通った者として、講師陣から何を求められるのだろうか。

わからない。

わかりようがない。


・・・明日は忙しい。

早く帰って寝よう。
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