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この物語はフィクションです30

5月23日


偽りの恋人とのやりとり、その最後の記録。
私は腹を立てていた。
それもこのうえなく。
なぜなら、彼女は私にメールを無視されたことに腹を立て、
おまけに私が一方的に不当なことをしたかのような、
自分には何も非がないというような態度で私を責めようとしたからだ。

旅行中なのはわかってたけどさ、
せめて1通ぐらいはメール返してくれてもいいんじゃないの?


私がなぜ途中からメールを返さなくなったのか、
先方にはまったく心当たりがないらしい。
私は怒りを抑えきれず、彼女に電話をかけた。
彼女にはどうしても訊きたいことがあった。

「・・・・・あのさあ」
「なによ」
「電車を乗り継ぎしまくることが出来る人って、すごいの?」
「そりゃすごいよ」
「へぇ・・・・それでさ、電車を電車と呼ぶ人って、スカした人なの?」

私が訊きたかったのは、私を大いにイライラさせた、あるメールのことだ。
私は旅の道中、彼女にこういう内容のメールを送ったのだが。

いま電車に乗ってる
なんか乗り換えしまくり
 

普段はしないことをしたという意味の、報告のつもりで送った。
それで彼女からの返信は、こうだ。

私も今度仕事でそっちに行くけど
東京経験2回の田舎者にはきつい仕事になりそうだわ
やはり汽車乗り換えまくりの様子
ところで、都会もんは鉄道のことを汽車ではなく電車と呼ぶそうだね
すかした奴らは嫌い
あなたも素直に汽車って言えばいいのに
ムリするなよ


厳しいかもしれないが、彼女のこのセリフは私を激昂させるに十分だった。
自分のこめかみのあたりで、血管がぴくぴくするのを感じた。
なぜあんな単純なメールでこれほど不快なことを言われなければならないのか、
それがまったく理解できず、混乱し、怒りばかりがつのった。
第一、鉄道を汽車と呼ぶのが素直な私だと決め付けられているのは、なぜなんだ!
貴様と俺を一緒にするな馬鹿野郎、と心の底から思った。


「そういうつもりで言ったんじゃないって」
「じゃあどういうつもりなんだ」
「だからそれは、あなたが気にしすぎなんだって」
「自分であのメール見て、本当に何とも思わないのか?」
「なに、それでメール無視するようになったっての?」
「ああ、あのメール受け取って、旅先で俺が何をしたかはもう報告しない方がいいなと思った」
「だからそれは勘違いなんだってば」
「そこまで言うなら、言わせてもらうが―」

もし私が、「高島屋で値段が高いものを見つけた」とメールを送ったなら。
返事は「金持ちなんてどうのこうの、自分みたいな貧乏人はどうのこうの」。
もし私が、「紀伊國屋本店に行った、面白そうな本がたくさんあった」と送ったなら。
返事は「ろくでもない自分にはそんな高尚な趣味はない」。
もし「新宿の歌舞伎町に行ってみた」と送ったなら。
「自分みたいな田舎者は、そんな危ない都会の街には行けない」という返事。

「―っていうメールを、アンタは送ってくるんじゃないの?」
「それは・・・そうなるね」
「んな話ばっかり、いったい誰が聞きたがるっての? イラつくわ」
「・・・・・ごめん」
「それにさ、なにその卑屈になっておきながら他人を馬鹿にする態度」
「べつに、馬鹿になんかしてないよ」

ああ、クソも自覚無ぇんだなこいつ!
イライラする!

「あのさあ、俺は電車に乗って、普段しない乗換えをたくさんした、っていう意味でメールしただけだよ」
「それはわかってるって」
「それがどうして、都会モンはスカしてるっていう話になるわけ?」
「・・・・・・・・・・」
「田舎者な自分より都会者の方がすごい?」
「そりゃ、すごいとは思うけど」

そうかそうか。
貴様はほんとに面白いな。

「劣等感を感じるのはある程度仕方ないにしても、それ相手を馬鹿にして埋め合わせしてない?」
「そういうつもりはないけど」
「だって、皆ろくでもない自分と比べてもどっか劣ってるんだよね?」
「・・・・・・・・・」
「毎回必ずそういうことにしてるよね?」
「・・・・・・・・・それは―」
「あのさあ、それ俺が一番嫌いなタイプなんだよね・・・ほんとイライラするわ」
「ねぇ、あなた私のこと馬鹿にしてるでしょ・・・・・あのさ、いや・・・いいや、言わない」

そら来た、またこれだ。
今度ばかりは我慢なんかしてやらねぇぞ!
いい加減飽きたんだよ、その反応。

「どうして言わない?」
「言ったってどうせ聞く耳持たないでしょ?」
「ほう・・・アンタがそれを言うか」
「なにさ、それ」
「こっちは色々説明してるのに、そっちは我慢できなくなったらすぐ“私のこと馬鹿にしてるでしょ”だ」
「・・・・・・・・・」
「こんなに怒った言い方しなくても、俺が何の説明してても、毎回そうだよな?
「・・・・・・・・・」
「それで、聞く耳持たねぇのはどっちだって? いい加減にしろよテメェ
「・・・・・・・・・」

頗る腹が立つ。
我慢する気が起きない。
まったく起きてこない。

「あのさ・・・・アンタ自分と違う人に何か恨みでもあんの?」
「・・・・・・・ないよ」
「アンタ自分のこと、ろくでもないろくでもないって言うけど」
「言うね、その方が楽だから」
「それ、他人のせいにして埋め合わせすんのやめたらどう?」
「他人のせいにはしてない」
「じゃあどうしていちいち他人を馬鹿にするようなこと言うの? しかも自分のことを卑下するときに限って」
「・・・・・・・・・」
「それはアンタがいつもしてることだろ・・・ほんとに何の自覚も湧いてこねぇの?」
「・・・・・・・・・・」

そうか、駄目か。
ならば言おう。

あんたがろくでもないのは、普通の人のせいじゃない。
あんたがろくでもないのは、高尚な人のせいじゃない。
貧乏人として劣った点があるのは、金持ちの人々のせいじゃない。
田舎者として劣った点があるのは、都会者の人々のせいじゃない。
それはアンタのせいだ。
アンタが他人に対してコンプレックスを持っているからだ。
そのかどで他人のことを馬鹿にするのは間違っている。
アンタは自分の劣等感に対する思いを丸投げしている。

「そうだよ、全部私のせいだよ・・・あなたをイライラさせた私のせい」
「・・・・・・あ?」
「あなたがイライラするようなこと言ったから、こんなことになったんじゃん」
「・・・・・・・あァ?」
「だから私のせいだって」

あ?
人の話聞いてたかテメェ?

アンタって、ほんと自分のこと自分で責任とらないんだな!
「なんで私がそんなこと言われなきゃ―」
「結局それも俺のせいにしてるだろうが!」
「私のせいだって言ってるでしょ」

今日は逃がさねぇぞこの野郎―
ここで逃がして後悔するような真似は、するつもりがないんだよ!

「イライラしてるからってだけの理由でこんなこと言うかよ!」
「・・・・・・・・」
「俺をイライラさせたからオマエはこんなこと言われてるのか?」
「・・・・・・・・・・だって、イライラさせたんでしょ?」
「こんなに説明したのに、それじゃオマエ何も悪いことしてねぇことになってんじゃん!」
「・・・・・・・・・・・・そう、だね・・・」

ふざけてんのか貴様。

「あのさ・・・オマエがろくでもないのは、俺のせいじゃない」
「・・・・・・・うん」
「他の誰かのせいじゃない」
「・・・・・うん」
「それで俺がイライラしてるのは、少なくとも俺のせいだけじゃない」
「・・・・・うん、そうだね」
「それで色んなことが俺のせいにされるのも、俺のせいじゃない」
「・・・・・・・・・・そうだよ」
「そんな風になるまで自分に責任をとろうとしなかったオマエのせいだ」

言ってやった。
スッキリした。

「ねぇ、そうやって人を否定するの、やめたほうがいいよ・・・」
「なんでだ」
「そんなことしてたら、自分と同じ人しかあなたの周りにいなくなっちゃうよ」
「またそれか・・・・」
「何が?」

ほんと最後までイライラさせてくれる。
他人のせいにするのがうまいんだな。

「自分と同じような奴ばっかり傍に置いてるのは、アンタの方じゃないの?」
「・・・・・・・・・・!」
「ろくでもないって言いながら・・・それを自称して勝手にろくでもない振る舞いしてる奴らをさ」
「・・・・・・・それは―」
「選んだんだろ、自分で、卑屈にならずに済む関係を・・・あんた前に言ってたよな?」
「・・・・・・・・」
「ろくでもない奴らばっかり集まってろくでもないことばっかしてる、って」
「・・・・・・・そうだね」


「・・・・もう知らんわ、俺のせいにされるのはうんざりだ」
「・・・・・・・うん」
「貸したCDは捨ててくれて構わない」
「・・・・・うん」
「じゃあ、サヨナラ」
「・・・・・・・・・・・」


回線と一緒に、関係は切れた。
今回の教訓は・・・・いや、もっと考えよう。
くよくよせず、前向きに。
仕事をして、考えて、体を動かして・・・


もう二度と、こんなことが起きないように。
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コメント

前々から思ってたけど、たぶん、この「偽りの恋人」さんとやらは俺に激似だ。
そう思わない?
だからここで学んどくよ。
おんなじ様なことはしないように。

ちょ、マジで言ってんの?
私はそうは思わないんだが
少なくとも、あそこまで酷くはねーだろ
歳のこともあるしな・・・
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