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この物語はフィクションです24

5月5日


偽りの恋人と、電話。
あまりに痛々しすぎたメールから、はや数日。
「もうどうでもいい」とか「こんな魅力のない私でごめんね」だとか、
彼女は考えうる限り最悪の逃げをうったのだが・・・
意外にも、本人から電話でこんな発言を聞くこととなった。

「あのね、この間のメール・・・ごめん! ほんっとにごめん!」
「・・・・なにが?」

私は彼女の発言を疑っていた。
これ以上ないくらいに深く深く疑っていた。
いったい、なにゆえに彼女は謝るのか。
そこがはっきりしていなければ、明確な反応はできない。
というよりも、すべきでない。
私はそういうタイプなのだ。

「だから・・・ほんとにごめんね! 私が悪かった! ごめん!」
「・・・だから、何がさ? 俺は何も怒ってないよ」
「ごめん! ほんと、あのときはおかしかった! 魔が差したんだって!」
「・・・えーと・・・・・」

私は本当に、少しも怒っていなかった。
少しだけ悲しくなったりはしたが・・・
それよりも、次に何をすべきかが大事だ。
彼女が私に嫌われるのが嫌で謝っているだけなら、
私は何か別の方法を考えなくてはならない。

「・・・それで、何がいけなかったの? なんで謝ってるの?」
「だから、ほら・・・どうでもいいとか、魅力のない私がどうのとかさ」
「で、それの何がいけなかったの?」
「えっ? ・・・そりゃあ、私が逃げたから」

彼女の発言に私は、ほう、と思った。
酷い話だが、はっきり言って私はそこまで期待していなかった。
きっかけが何だったにせよ、彼女の傷は相当に深刻なものだろうから。

「で、何から逃げたの?」
「・・・私? いや、どっちだろう・・・?」
「で、何のせいにして逃げたの?」
「それはあなたのせい」
「うん、そうだね」

彼女はある程度わかっているようだった。
やはり、頭は悪くない。
彼女は殊更に頭が悪いふりをしているのが楽なだけだ。

「・・・・・怒ってないの?」
「ぜんぜん」


正直なところ、私のほうも逃げをうったと言える。
あのあと私は、わざわざ嘘をついてメールを打ち切ったのだ。
つまり私は彼女から逃げた。
やるかたないせりふを送ってよこした彼女のせいにして。
もちろん逃げっぱなしにするつもりはなかったが・・・

「で、そっちは怒ってないの?」
「なんで怒らなきゃいけないの?」
「俺は君を傷つける恐れのあるせりふを吐いたよ」
「・・・・・なんてセリフ?」
「自分のどこに魅力があるか、考えたことはあるか? って」
「ああ、あれ? べつに私傷ついてないよ」
「“そこで” 逃げたのに?」
「それは、うーん・・・・・」
「とにかく・・・ごめん、悪いことした」
「なんか、よくわかんないけど・・・私、自分の魅力について考えてみるよ」
「えぁ?」
「自分に魅力がないって私が言っちゃったら、あなたの立場がないじゃん?」

うーん。
頑張ってくれるのは嬉しいが、それはどうだろう。
なにやらテキトーな匂いの・・・この方向でいいんだろうか。

とりあえず。

大事なのは、彼女にはまだ自覚がないということだ。
自分から逃げたという自覚がない。

それともうひとつ。

彼女は、自分が嫌いなはずの努力を知らず知らずのうちにしている。
彼女はストレスがかかるもののすべてを努力と呼び、
そして潔癖なまでにそれを忌み嫌っているようだが、
あきらかに今回、ストレスがかかっていたにもかかわらず頑張った。
聞けば、あのメールを打ち切って二分後、
すでに彼女は自分の発言を深く後悔し、
夜も眠れないほどに考え込んだのだそうだ。

そんな風に、彼女はみずからひたむきに頑張っている・・・

いまは、この私のために。


ここはもっと気長にやっていこう。
もう少し小出しにしたほうがいいかもしれない。
少しずつ、少しずつ・・・
彼女が自分のために頑張れるように。


ははは。


私は酷い奴だな
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