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この物語はフィクションです14

4月9日


会合であった、不審な出来事の整理。
先日の会合で、私は妙な話のふられ方をしたわけだが。
主催側である若者は、皆が黙ったところを見計らい、
私が意見を言うよう・・・あきらかに仕向けたのだ。
おそらく、そう見て間違いない、のではないだろうか。
別に、それがただの杞憂だとしても構わないのだが・・・・

あの外回りの若者は、一体何を考えているのだろう。
これまでの彼の行動を、一通り洗ってみよう。

ええと、たしか・・・・


彼は外回りでうちの会社に顔を出したときも、
そして会合への参加を呼びかける電話でも再三にわたり、
「若手に参加して欲しい旨を、あなたが皆の前で言ってください」
と私に言い続けた。

“私が皆に向かって、より多くの若手を参加させるよう呼びかける”

この案は私の考えではない。
彼の考えたことだ。
以前私が会合に出ることを渋りだしたときに、彼が提案したもの。
その出来事があってから、彼は何度もこのことを口にするようになり、
会合への勧誘も一層頻繁になっていったのだ。
つまり彼は、より多くの若手に参加して欲しいと思っている、
・・・・・ということになるか。

しかし、彼は会合の主催側だ。

直接訊いたわけでもないが、おそらく主催側は自分の意見を言うことができない。
彼らは会合を企画し、企業家を集め、それらの人々の要望に副った情報を集める。
そして取りまとめ、打診し、招聘し、紹介する・・・・・それだけが仕事なのだろう。
彼ら主催側が自ら率先して意見を言うところなど、一度も見たことがない。
そこで彼は、自分の意思を表明できない代わりに私を使おうとした・・・

彼は皆の前で、私が意見を言わざるを得ない状況を作った。

「ところで、そこの若手の方から何かご意見があるようなんですが」
「・・・・・・・・・・・!」
「・・・・・さあ、どうぞ」

議題がすっかり片付いたあとで、私が何の意見を言うべきなのか。
たとえ私自身に意見が無いとしても、そこで言うべきことが何なのかは、
そう、思い当たる節がある・・・・
彼が「もっと若手を参加させて欲しい」旨を言ってください
と私に言い続けてきたからだ。
そして仕方なくその“意見”を言い、幹事長に頭を下げた私の横で・・・・

「―ということで、宜しくお願いします」
「こちらからも、是非お願いします」

・・・・・彼も同じく頭を下げた。

これはやはり確信犯とみて間違いない、とそのときの私は思った。
会合が終わった後、私は片付けに紛れて若者に近寄った。
周囲は我々が旧知だとは知らないはずなので、
台所のカウンターに向かい、他の人々には背を向ける形にして・・・
そのとき、彼はいやにおどおどしていたのだ。
私が半笑いしながら拳を握っていたせいもあったのだろうが・・・
あのとき我々は、完全に立場が逆転していた。

「あっ・・・どうも、お お疲れ様でした・・・」
「あのう・・・何か、私・・・ハメラレタ、ヨウナ、キガ、スルンデスガ・・・・・!」
「いやいやいや、何ですか・・・ええ、ああ・・・・・すいません」
「あとで、いいんですけどね・・・・・ツラぁ、貸してもらえませんかね・・・・・」
「ああ・・・はい、すいませんでした・・・」
「ええ、ツラぁ・・・・貸してくださいね・・・・へへへ・・・」
「えあ・・・すいません・・・はい、何でもします・・・」

すくなくとも彼には、自分が謝るべきことをしている自覚はあった。
彼がどこからどこまで、何を企んでいるのかはまだわからないが・・・
私にはひとつ、不満なことがある。
彼に言うべきことがある。

私を使うなら、もっと効果的に使いやがれ!


私は彼の思惑通り、より多くの若手を参加させるべく意見を表明したわけだが。
あの場で言っても、おそらくほとんど効果がない!

そこであの日の会合の資料を読み直してみたのだが・・・
もっと多くのメンバーが参加者一覧表に書いてあったのに、
それらの人々は当日参加していなかった。
会合自体は出欠票をとって開催するものなので、
一覧に書いてある人物は、少なくとも出席する予定だったはず。
ひとりは急用で、もうひとりはなぜか知らないが、とにかく欠席した。
どちらも若手を抱えている上、最古参の重要メンバーだった。

もしかすると・・・・
参加者の欠席は、主催側にとっては想定外のことだったのかもしれない。

もし参加予定のメンバーが全員出席していたならば、
あそこで私が意見を言うことにも、それなりの効果が期待できたはずだ。
そして私自身、欠席者が誰もいなかったならば・・・
意見を言うだけでなく、その意義についても自ら説明する気になっていたはず。

外回りの若者が、それをも見越していたのだとすると・・・


ああ、やはり彼には思うところがあるのではないか。
為すべきことがあるのではないか。
意思をもって仕事をしているのではないか。

あのやろう、この私を無駄に使いやがって・・・・
何を為すべきかもわからずに使われるのは、まっぴらだ。

・・・・ここは本当に、ツラを貸していただくことにしよう。


私は早速、外回りの若者の会社に電話した。
あいにくと彼は不在だったが、事務の女性がすぐに彼に連絡をつけてくれ、
電話を切ってから数分もしないうちに、彼から折り返し連絡が入った。
外回りの・・・いや、もう外回りの若者というのも面倒くさい。

そうだ・・・外回りの若者あらため、Hさんよ・・・・

テメェ、この私が納得できるまでは逃さねぇぞ・・・覚悟しやがれ。

「どうも、お電話ありがとうございます・・・で、ご用件は?」
「どうも・・・・お忙しいところ・・・」
「いや、忙しいときは忙しいし、暇なときは暇なんですけど・・・何でしょう?」
「Hさん・・・近々、こちらにいらっしゃる予定はありますか」
「水曜日に×さんのところへ打ち合わせに行くんで、その日で良ければ・・・」
「そうですか、では水曜に・・・お聞きしたいことがありますので、いらしてください」
「どんなご相談でしょう?」
「なぜ私があなたに相談すると決まってるんですか・・・」
「いや、どういうお話かわからないと予習が出来ないですから・・・」
「仕事の話ですが、どうしたもんでしょうね・・・手短に済む用件ではないかもしれませんので」

冗談を言う気はないし、遊びのつもりではない。
威圧感を抑える気もさらさらない・・・・逃げるなよ。

「そうですか・・・水曜は一応×さんとのことがありますので、少し時間が遅くなるかもしれませんが・・・」
「私は大抵会社におりますので、もしHさんさえよろしければ何時でも」
「・・・・・・・はい」
「出来れば、是非お時間をとって来てください・・・」
「・・・そうですか、わかりました・・・では、水曜に伺います」

よろしい・・・

さあ、腹を括ろうじゃないか。
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