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この物語はフィクションです12

4月6日


明日の会合について、悩む。
一旦は出席を決意したものの、私は出欠票を出せずにいた。
例の外回りの若者から言われたことと、
先日話を伺った名士たちの態度とが、頭のなかで交錯していた。
たとえ私の動機の大部分が、己の鍛錬という私的なものであっても、
私が彼らの前に顔を出すことには、一種の責任が伴う。

そのいかんともしがたい負担を緩和するためにも、
私みずからが、より多くの若手を参加させるよう皆に呼びかけるべきだ、
・・・というのが、外回りの若者の意見だったのだが。
踏ん切りがつけられぬまま、時間は過ぎた。

日が沈み、外が大分暗くなっても、私はまだ会社で悩んでいた。
出欠票を出すべきか、出さざるべきか・・・


ふいに電話が鳴った。

電話をかけてきたのは他でもない、外回りの若者だった。
彼は会合に参加して欲しい旨をこちらに伝えてきた。

「会合に参加していただけませんでしょうか」
「まさか、私に用があって電話したわけじゃないでしょう」
「だって、社長は忙しいんでしょう?」
「まあ、社長は出る気無いっつーか・・・」
「じゃああなたが出てください」

くそっ、私には何か不当に威圧的だなおい。
いくら十年前からの顔見知りでも・・・そうだ。
いまさらだが、彼は私が塾に通っていた時分、理科の授業を担当する講師だった。
塾に行かなくなってからは何の交流もなかったが、
我々はその時から、互いの顔と名前を知っている。
いまこうして仕事の付き合いがあるのは、不運と言うべきか幸運と言うべきか・・・

よし、正直に話そう。

私は出席するか否かを迷っていること、
そしてその理由を彼に説明した。


「まあ・・・そりゃあ、大人の世界ですから・・・」

・・・・あ?

「ええ、ええ、私は子供ですとも、あー子供ですよそりゃあ、すみませんでしたねぇ」
「いや、ははは・・・別にそういう意味じゃなくて・・・」
「まあとにかく、そういうことで悩んでいた次第なんですが」
「じゃあなおさら出席して、こういう風に若手に参加して欲しい、とあなたが言ってください」

だから、なんで語尾が「していただけませんか?」じゃなくて「してください」なんだよ・・・
おい、何かしら不当じゃないのかそれ・・・腑に落ちないな。
ともあれ、彼の提案は変わらないようで、私は暫し唸った。

「うーん・・・・・・」
「是非出席していただきたいんですが」

これじゃあ私が駄々を捏ねているみたいじゃないか。
会合への参加・不参加は自由のはずなのだが、
彼の言い方には、何かの強制力を感じる・・・・ああ、不遜だ。
くそっ、そろそろ腹を括るか・・・・


「あーもーわかりましたよ、ええ、じゃあ出ますよ・・・・・・・たぶん」
「じゃあ、あなたの分のお弁当も用意して待ってますから」
「はあ・・・・ああ、突然行ってもいいもんでしょうかね」
「もちろん結構ですよ、では明日の朝、また改めて確認の電話を入れますので」

逃がす気さらさら無いなこいつ・・・

「ああ・・・くそっ・・・わかりましたよ」
「それじゃあまた明日・・・・失礼します」


何だってんだ。
恥ずかしいことだが、期待されるのが嫌で迷っていた私に・・・
こいつが一番期待してるんじゃないのかクソッタレ。

彼は、私を逃がしてはくれないだろう。

仕方ない・・・出るか。
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