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この物語はフィクションです6

2月28日


仕事で、急な展開があった。
既存の取引先から、新たな申し出があった。
私がいま作っている商品を卸しで出さないか、という申し出だ。
だが正直言って、私の商品は卸しには向いていない。
少なくとも、それをわかって貰えないところに出すわけにはいかない。

だから先方にはその旨を手加減無しで申し上げたのだが、
いままでとは対応が少し違うようだった。
先方は出来るだけ譲歩する姿勢でいたようなのだ。


「なにぶん、あれは卸しには向かないものですから・・・難しいと思います」
「なに・・・・それはどういう理由なの?」
「以前私が社長と喧嘩する原因にもなったんですが、私のやり方では手間がかかりすぎて・・・」
「それは、ああ・・・コストがってことかい?」
「そうです、ですから卸しといっても安く出せるものではないんですよ」
「ふーん、そうなの・・・・・・で、幾らぐらいなら出せるの?」
「少なくとも、1キロ2000円・・・・・・それ以上は負かりませんね」

私はそれこそ素で、若さと物怖じのなさを前面に出した。
もっとも・・・・それが臆病の裏返しなのかもしれないが。

「そう、それなら出せるんだ・・・・じゃあどのぐらいの量で出せる?」
「以前、社長の方からそちらに商品が行っていたことがあると思うんですが・・・・」
「月に100キロとかっていうのは、駄目?」
「ああ、それは到底無理ですね」
「ああそう、前は確か・・・週に10キロ20キロとかだったけど、それも駄目?」
「出せるとしたら、週に8キロから16キロ・・・それぐらいでしょうね」
「へえ・・・・それで、安定供給は出来るの?」
「さっきの量なら大抵は大丈夫だと思いますが、それにしても時期的な増減はあるでしょうから・・・」
「ふーん・・・そう、じゃあそれでちょっと、訊いてみておくわ」

先方には既に、欲しがっている売り先があるらしい。
それにしても・・・・・これは、何なんだ?
いささか拍子抜けしてしまった。
一体、あの取引先で何があったのだろうか。
私には譲歩する必要が無く、単に事実を申し上げただけではあるが。
あの値段は一般の“上級品”をはるかに凌ぐうえ、
提示したこちらの都合も、卸しにとっては楽なハードルではないはず。
それにもかかわらず、先方には値切るつもりがまったく無さそうだった。

ああ・・・心配事が増えるのでなければいいが。


そう思っていたところ、数十分後に先方から電話が入った。

「ああどうも、さっきの話だけど、1キロ2000円だったっけ・・・それでいい?」
「はい、しかし・・・どんな形で納品するかっていうのは、決まってるんですか?」
「うーんとね、××入りで、1パックにしてもらいたいんだけど・・・出来るかい?」
「そうですか・・・小分けとなると、また違ってくると思いますが」
「そう、出来ればAとBを8キロずつ、なるたけ早く欲しいんだけど」
「うーん、やはり社長に訊いてみないとわかりませんね」
「わかった、じゃあ早めに訊いといてください」
「はい、じゃあこちらから・・・・早めに御連絡差し上げますので」


・・・・・・・・勘弁してくれ。

心配事は、うんざりだ。
出来ることなら、こういった交渉事の悩みなど一切抱えたくはない。
それは私の本分ではないのだ。
作り手である以上は無視出来ないにしても・・・・

上には、「譲歩する必要は無さそうだ」とだけ言って置いた。

そこをしっかりやってくれさえすれば、私が手を出すべき案件はない。
是非とも、安心して仕事をしたいものだ。
ああ、今日は帰ってゆっくりしよう。


月が綺麗なうちに・・・
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